生もと造りの日本酒
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第6話 麹(こうじ)
コーボ「ワア!真新しい杉の香り!天井からも壁からも漂ってくるよ。ここがこれから麹造りに使う新しい麹室だね」
コウジ「やあ、コーボくん。待っていたよ」
コーボ「麹君、ボクも楽しみにしていたんだ。ここはとっても清々しい気持ちの良い室だね」
コウジ「そうだろう。でもね、大事なのは昔からのやり方と全く同じ作り方を踏襲していることなんだ」
コーボ「エッ、どういうこと?」
コウジ「まずね、分厚い杉板を贅沢に使った麹室にしていること。それには樹齢98年の大木を大量に買いつけて、板に挽くことから始まったんだ」
コーボ「そんな大木を使ってるの?」
コウジ「ウン!。それに十分に納得いくものを造るために、業者任せではなく、設計から素材の吟味まで、全て自社で行ったんだ。その上で腕の良い大工さん達が存分に技を発揮して、丹念に造り上げてくれた」
コーボ「なる程!これなら百年は大丈夫だね。納得」
コウジ「麹室は今までと同じく、独立した4室を用いるんだ。もと麹、添麹、仲麹、留麹と、酒造りの各段階で用いる麹を、それぞれ最適なタイプに造り分けるためにね」
コーボ「そんな徹底したやり方をするのは大七だけじゃないかな」
コウジ「その通り!道具は麹蓋と中箱だけで、機械は一切使わないしね。大七にとって大切なことは、手間を省くことではなくて、あくまでも最高品質を目指すこと。この麹室ならものに応じて時間の延長も、温度や湿度の調整も自由自在。できた麹は、エアシューターなんかではなくて、台車でそっと運ばれるんだよ」
コーボ「こだわりが徹底しているね」
コウジ「でも、一番大切なものは、まだここにはないんだ」
コーボ「なぜ?こんな素敵な麹室が完成したじゃないか?」
コウジ「いや、一番大切なのは、何と言っても、大七の蔵に住んでいる微生物なんだよ。それは大七にしかいない独特の菌でね、特に麹室に住んでいる」
コーボ「ねえ、確か、生もと造りの場合、酒蔵によって全部味が違うって聞いたことがあるけど、本当なのかい?」
コウジ「本当だよ。それは乳酸菌が違うからなんだ。大七の乳酸菌は、蔵の宝であり、日本の酒造業界の宝だという専門家もいる程だからね」
コーボ「へえ〜。そうなんだ。一体何種類ぐらいの乳酸菌が大七にはいるんだろうねえ」
コウジ「10種類以上もの乳酸菌がいるよ。でもそれがね、不思議なことに、どれか一つ培養してほかの蔵にもっていっても、決して大七と同じ酒は出来ないんだ」
コーボ「そうかあ。菌達には絶妙のバランスがあって、それをこわしてはいけないということだね。それじゃ、麹室が新しくなっても大丈夫かなあ?」
大勢の麹たち「心配ご無用だよ。コーボ君」
コーボ「ワッ!びっくりした。こんなに沢山の麹達が居たなんて」
大勢の麹たち「僕らは大七の長い歴史の中で作られた、前からいる麹たちさ。これから毎日新しい蔵に、今までの微生物たちを運んでくるからね。なにも心配はいらないんだ。ね、道具たち」
麹室の道具たち「僕たちも、今までの麹室にいた仲間だからね。微生物は僕たちの中にも沢山宿っていることだし、安心だよ」
コーボ「ウン、わかった。皆で力を合わせて新たな百年の歴史を作っていこう!エイエイオー」

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