生もと造りの日本酒
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第7話 生もと その一
コーボ「今日は新しい生もと室で、大七乳酸菌君に会おう。元気かな」
大七乳酸菌「やあ、コーボ君!僕らも、とっても元気だよ。この生もと室をつくる時、従来蔵に住んでいる微生物を移すことに、大変気を配ってもらったから」
コーボ「それは安心、大丈夫。何せ皆大事な蔵の宝だもの」
大七乳酸菌「ありがとう。特に生もと造りのかなめとなる乳酸菌は、蔵によって千差万別の個性がある。優良な乳酸菌が安定して存在することが、味を決める大事な要素になるんだ」
コーボ 「そうそう、そのためには日々継続あるのみだものね」
大七乳酸菌「うん。一年に数本ばかり生もとを仕込んだくらいじゃ、この安定感は無理だろう」
コーボ「その中で果たす乳酸菌の役割は何か、教えて」
大七乳酸菌「それは、桶の中をクリーンにすることさ。僕ら乳酸菌が作る乳酸は、野生酵母など不要な微生物を殆ど全てやっつけるパワーがある」
コーボ「何と頼もしい!」
大七乳酸菌「その中でただ一つ、君達清酒酵母だけは乳酸があっても増え続ける。最後はアルコールで僕たち乳酸菌が参ってしまい、君たちだけが純度100%で増えていく。僕らはその手助けをするのさ」
コーボ「素晴らしい仕事だね。でもそんな難事業に失敗することは無いの?」
大七乳酸菌 「あるとも。生もと造りは上手くいけば完璧だが、技術が未熟だと失敗もある。明治時代には全国総生産量のうち、8%も失敗したそうだ。そこで国の研究機関が発明したのが、山廃もとと速醸もと」
コーボ「あ、知っている。それらの製法なら省力化されて、失敗も激減したそうだね」
大七乳酸菌「うん。ただ、味わいは生もとと同じという訳にはいかない。やはり、生もとの良さは、厳しく切磋琢磨して選び抜かれた酵母の成せる技なのさ」
コーボ「つまり、ひ弱な酵母や、低温に弱い酵母などは、厳しい生存競争にさらされて淘汰されてしまうってこと?」
大七乳酸菌「そう、精強な酵母だけが子孫を残すんだ。速醸もとのように安楽な環境で数を増やすことだけを優先したものとは全く異なるね」
コーボ「そうか。生もとの力強い酵母なら醪の最終段階まで健全発酵を続けられる。それが味のキレの良さにつながるんだね」
大七乳酸菌「ただ君たち酵母にも寿命があって、ひとつの酵母が分裂できるのは平均24回。それに育つ環境の栄養が良すぎると、肥満して働かなかったり、無駄に増殖して老化してしまうんだぞ」
コーボ「大丈夫!その点、逆境で酵母を育てる生もとでは、あまり分裂もできず、酵母も若さを保っている。僕たち鍛えられた若くスリムな酵母は、低温かつ飢餓状態という吟醸醪の中で、最高の力を発揮するのさ。エヘン!おっと、僕もぜい肉がついていないかな。イカン、イカン。即栄養制限と鍛錬しなくちゃ。まあだ、まだ、大七の生もとづくりに活躍したいし」
大七乳酸菌「そうだよ。それにこれから沢山の後輩酵母たちにも、大事な事を伝えてあげなきゃ」
コーボ「ヨッシャ!任せてくれ」
大七乳酸菌「日々継続あるのみだね。コーボ君。この次は生もとの仕組みを一緒に勉強しないか」
コーボ「うん。いいとも!楽しみにまた来るよ」

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