生もと造りの日本酒
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ぶるわーず

第9話 醪(もろみ)
コーボ「さぁて、今日はいよいよ出番だぞー!生もとが完成して一週間、充分な休暇だったからな。勇気凛々、武者震いだ」
コウジ「おーい。落ち着けよ」
コーボ「エ、誰?」
コウジ「ボクだよ、麹さ。今日コーボ君と一緒に仕込みに参加するよ。よろしくね」
コーボ「オウ!頑張ろうぜ。ブヒヒヒィ〜ン!」
コウジ「そう興奮するなよ。君たち生もとの酵母は馬力がありすぎる。今からそんなに意気込んでいたら、狭い街中をスポーツカーで暴走するようなことになっちゃうよ。慌てないでクールに行こう。クールに」
コーボ「ブ、ブヒ、ヒ…。OK、分ったよ。ウン、クールにね」
コウジ「そうだその調子。ア、ホラ見て、蔵人たちが長く広い廊下に何十枚もスノコを並べて、その上に蒸し米を薄く拡げているよ」
コーボ「あれは何をしているの?」
コウジ「冬の寒気で蒸米を冷却しているのさ。堅くしまって溶けにくいようにね」
…… 初日は小さな添タンクへ添仕込み。コーボ達に加え麹、水、そして蒸し米が投入される ……
コーボ「あれぇ、大きいタンクじゃないの?」
コウジ「いきなり大タンクに少ない量を入れちゃ、冷え切ってしまうだろう。まずは小さい添タンクで二日間じっくり助走するってわけさ」
コーボ「なる程、それで三日目に大きな醪タンクに移って、仲仕込みになるんだね」
コウジ「うん、そこで大タンクの半分くらいまで増えるんだ」
…… 数日後 ……
コーボ「今日で四日目に、最後の留仕込みでタンクが満量になるわけか。ねえ、でもさ、何だかやけに窮屈で苦しいんだ」
コウジ「そうだね。醪も最初の頃は、蒸米が水を吸ってしまって固い状態だから仕方ないのさ」
コーボ「おや?蔵人たちがせっせと櫂入れを始めたぞ」
コウジ「よおし、面倒がらずに、固いうちから十分櫂入れしておくことが大事だからね」
…… 数日後 ……
コーボ「あれれ、れ、ホラ見てよ。さらさらした水泡がプクプク。お次はとんがった形の岩泡も増えてきたよ」
コウジ「ア・ホントだ!モクモクとどんどん泡が高く上がって高泡になってきたぞお」
コーボ「何だか温かくなってきたし、こりゃ気分がいいや。酵母の仲間もどんどん増えてきたし」
コウジ「さあ、気持を引き締めて!これからが本番だよ」
コーボ「エッ?何だか急に醪の中が寒くなってきてないかい?それにさ、泡もどんどん落ちているよ…」
コウジ「そうなんだ。これからは日を追うごとに醪の中はずんずん温度が下げられて寒くなるし、アルコール濃度は上がり、君たちは息苦しくなってくるだろう。ここが正念場なんだ。君たち生もとの酵母は、数は少ないが強者揃いだ。この程度の低温にへこたれるなよ!」
コーボ「こんな中でも一生懸命僕たちに栄養を送ってくれ続ける麹くんたちがいるんだものね。へこたれてはいられない。ヨーシ、頑張るぞ!それーっ!!」
コウジ「スゴイ、スゴイ。コーボ君驚異的な発酵力を見せてくれるじゃないか!通常の酵母なら死んでしまうような低温の中で、こんな長期間発酵を続けるなんて…。感動だよ」
コーボ「ホラ、ホラ。醪から上品な吟醸香が立ち上ってきた!味わいもますます奥深くなった」
コウジ「うん。死んで脱落したら、菌体が醪に溶け出して味を汚してしまうんだもの。皆最後まで良く発酵頑張って…グス」
…… 杜氏がやって来て、味見する。 ……
杜 氏「うん、素晴しい味わいになった。上槽するぞ」
二人一緒「ワーイ、ヤッタヤッター!!」

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