生もと造りの日本酒
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ぶるわーず

第10話 搾りと濾過
コーボ「やあ!原酒君、誕生おめでとう。会って話したくてね」
原 酒「やあ!コーボ君だね、ありがとう。何でも聞いてくれ」
コーボ「うん、あのね。醪をいつ搾るかはどうやって決めるの?」
原 酒「それは肝心な事だな。まず味わい、香り、アルコール分、全てのバランスが一番良いときだ。醪に含まれる糖分を君たち酵母がアルコールに変えていくね。それにつれて甘味は減り、酸味やアルコール分など複雑な味わいが増えていくんだ。杜氏さんは長年の経験で、明日にはどう変化するか予測できるからね」
コーボ「あっ、そこで一番良いタイミングで搾るんだな!」
原 酒「そう、時には酵母の体力が残っているかどうかもポイントになるのさ」
コーボ「僕体力には自信あるよ」
原 酒「まあ、生もとの酵母なら心配いらないよ」
コーボ「任せてくれ!で、お酒の搾り方にも色々あるんだって?」
原 酒「そうなんだ。ヤブタ式という機械を使って搾るのが普通だけど、大七では槽(ふね)という伝統的な搾り機に、醪を詰めた袋を敷きつめて、垂れ口からお酒を自然垂らしすることもあるし、他に醪を詰めた袋を吊り下げて、垂れた雫を集める袋吊りというやり方もある」
コーボ「要はお酒をできるだけ空気に触れさせないで、必要最小限の圧力で搾ることだね」
原 酒「そのほうが香りも豊かで澄みきった味わいになるんだ」
コーボ「なる程ね。じゃ搾った直後のお酒はどうなっているの?」
原 酒「醪のときと違って透明だけど、搾りたてのお酒には色がある。良いお酒は単なる黄色ではなくて、『青冴(あおざ)え』といって黄緑色がかっている。ただ、この色は熟成中に消えてしまうんだ。口に含むと、発酵したときの炭酸ガスが、少しばかり感じられるよ。ほとんどの酵母は搾ったときの酒粕と共に除かれるけど、お酒に溶け込んだ酵素はまだ生きているんだな」
コーボ「その酵素はどんな働きを?」
原 酒「生まれたての粗いお酒を成長させていくのは酵素の働きだ。何日か経つと搾った直後よりもお酒の甘味が増したり、香りが熟成したものに変化したりする。底に沈んでいる澱の中には酵母も生きているんだ。これらがある限り、生まれたお酒は刻々と変化していく。でも変化が行き過ぎると、せっかくの味わいのバランスが崩れてしまうよ」
コーボ「それならどうするの?」
原 酒「まず澱の上澄みを別のタンクに移したり、フィルターを使って濾過したりして、澱などの小さな固形物を取り除くんだよ。こうすれば、しっかり冷蔵している限り、ある程度日持ちがするようになるってわけなんだ」
コーボ「あ、それが生酒だね。フレッシュで美味しいよねえ。でもさ、酵素はまだ生きているんだから、お酒の変化は完全に止まらないんじゃないの?」
原 酒「だから長期間貯蔵する前に火入れをするんだ。火入れとは60数度で低温殺菌することだよ。そんな低温でもアルコールとの相乗効果で十分な殺菌効果があるから酵素の働きは完全に止まる」
コーボ「あとはじっくり熟成するのを待つだけになって…」
原 酒「目出たく僕が誕生した…」
コーボ「ウン、立派になって嬉しい」

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