生もと造りの日本酒
生もと造りの日本酒 生もと造りの日本酒

生もと造りの日本酒

トップページサイトマップEnglish Page

大七の酒造りの思想
大七酒造概要
大七ニュース
大七テーマパーク
大七ワールド
大七MAP
ショッピング

大七ワールド
ぶるわーず 松本隆男作品集 逸品を訊ねる 大七を愉しむ 大七ワールドインデックス

逸品を訪ねる

第一回 リーデル社の大吟醸グラス 〜大吟醸グラス開発のエピソード〜



 大七がこの開発企画に係わるようになったのは、1999年のフランス・VINEXPO会場(ボルドー市)で、唯一の日本酒ブースを出展していた私達(日本八壺会)に、現リーデル・ジャパン社長のアンギャル氏から接触があったのが最初でした。以来、私達はフランスで、また日本で、幾度にも渡るリーデル社のワークショップに加わることになったのです。
 リーデル社の指示は明確でした。20数個の異なる形状のグラスに同じ大吟醸酒を注いだ上で、テイスティングして最も心地よいものを選ぶ訳ですが、その際に視覚的要素、デザインの好みは一切無視してほしい、香りと味わいだけで選んでほしいと言うのでした。
 はたしてグラスの形状だけで明確な味わいの差を判別できるだろうか、と若干の不安を感じながら、テイスティングに臨んだものです。
 テイスティングの方法は、各人の前に並べられた全てのグラスに同じお酒を注ぎ、味わい、好ましくないと感じた除外するグラスを4点、それぞれが判断します。各人の判断が分かれた時は、多数意見に従います。この作業を繰り返しながら、最後に残すグラスが絞られていくのです。

 この時私自身は、予断かもしれませんが、仮説に基づく判断基準を設けてみました。日本酒の醸造酒としての特徴は、旨味(アミノ酸からくるほろ苦みも)にあります。それが良く感知できたならば、ワインと違った特徴をもつ醸造酒として、日本酒を認知し楽しんでもらえる筈ではないか、という仮説です。その為には口径の広いグラスのほうが、舌の両サイドまでお酒が行き渡り、旨味、ほろ苦みをよく感知できる筈だと考えました。
 私は一貫して口径にポイントを置いて、判別しました。もちろん機械的にではなく、自分の感覚で確認しながら。そしてこの仮説は大体において妥当していると感じました。

 ただし、これは大七については特によく当てはまりましたが、淡麗型の吟醸酒では、大きすぎるグラスでは焦点がぼやけてしまう、という体験もしました。口径は大きい程良いのではなく、適度な上限があることが予想されました。
 大七の生もと大吟醸に関しては、用意された最も大口径のグラスでも、時としてやや窮屈に刺激的に感じられる部分がありました。私の大口径好みを見て、アンギャル氏がこれではどうか、と奥から特別に大きなボール型グラスをもってきてくれました。これで飲んだ生もと大吟醸は、まろやかさとふくらみが一層感じられて、全く素晴らしいボリューム感。これは特殊すぎて、これから選ぶ大吟醸グラスの候補にはなりえませんでしたが、今もマイグラスとして自社で使用しています。

 さてテイスティングは進み、容量が小振りなもの、縁が外側に反ったもの、標準的なチューリップ型以外の特殊なふくらみをもったものは、次第に選択から消えていきました。日本酒はワインと違って特殊であり、日本酒に最も合ったグラスはワインとは異なる独特の形状になるだろうという予測というか期待は、見事に外れていきました。私はここに、日本酒の醸造酒としての普遍性を確認したいと思います。

 ワークショップは、参加メンバーを増やして日本でも繰り返され、次第に候補が絞られていきました。リーデル社ではこの結果に非常に興味をもちました。それは日本人のテイスティングによって候補に残ったグラスが全て、同一タイプに属するグラスだったためで、このことによってもテイスティングの信頼性が確認されました。

 最終選考会は、オーストリア大使公邸で、マーティング・ヴコヴィッチ駐日オーストリア大使ご夫妻や本国から来日したゲオルグ・リーデル社長も加わり、日本人では開発にご協力した12のメーカーや酒類専門家が参加して、合計21人で行われました。最終候補に残された6脚からのグラスから、この日の3回のテイスティングによって1脚が選び出されるのです。
 さて、1回目のテイスティングで6脚から2脚が除かれました。お酒が変わって2回目のテイスティング。どちらも大七の酒ではありませんでした。テイスティングは3回限りですから、12社のお酒のうち使われない酒が多数になる道理ですが、私は、大七の酒は使われない筈はないと予想していました。
 2回のテイスティングを経て6脚のうち、4脚が脱落し、2番目に口径の大きなグラスと、容量は同一ながらやや口径がすぼまったグラスの二つが残されました。
 決勝となる最後のテイスティングです。2脚にお酒が注がれ、そのうち一方に口を付けた瞬間、一口で大七の生もと大吟醸だと判りました。やはり決勝にはこのお酒が相応しいでしょう。
 ほぼ同じ容量で、口径のみが異なる2つのグラス。口がすぼまったものと、それほどすぼまらずにのびたものと。当然、私は後者を推しました。結果は7対14で後者に決まりました。
 決定後、リーデル社長は、次のように語られました。
 6脚を見て、最初、別のほうのグラスが気に入っていた。しかし、最後のテイスティングで、日本酒にはすっきりした呑み口だけでなく、ボディ感、コクなどの要素もあることが判った。それをよりよく感じさせるのは後者のグラスだったので、個人的好みはおいて、後者のグラスを自分は選んだ、と。

 最後の大七のお酒が、リーデル社長をして上記の発見に至らせたことに一役買ったのだとすれば、私としては非常に満足です。
(2004/04/07)
BACK

大七酒造株式会社
〒964-0902 福島県二本松市竹田1-66
TEL 0243-23-0007 FAX 0243-23-0008
E-mail:info@daishichi.com