シリーズ:お酒が語る、酒物語

「生酛貴醸酒」

コーボ 今日は生酛貴醸酒さんとお話しするんだ。そろそろかな。
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貴醸酒 やあ、コーボ君。お待たせしたね。
コーボ 大丈夫です。最初に貴醸酒って何か、教えてください。
貴醸酒 いい質問だ。貴醸酒は仕込み水の一部を酒に変えて醸造するんだ。発酵が緩慢になるので、まったりと甘く濃醇になる。平安時代に宮中で供された御酒のようにね。
コーボ へぇー、酒で仕込んだ酒!何て贅沢なんだろう!昔からある造り方なんですか?
貴醸酒 フランスの貴腐ワインの甘く濃厚な味わいを何とか日本酒で出来ないかと日本の技術者が研究して、70年代に開発したんだ。実は日本の古代にもしおりという同様の技法があったそうだ。
コーボ そうかぁ。で、大七ではいつから造り始めたんですか?
貴醸酒 2001年に開始し、それから毎年醸造している。始めてみると、大七ならではの面白い発見があったよ。
コーボ どんなことでしょう?
貴醸酒 まず、生酛造りの精強な酵母たちは、穏やかながら弛緩せず、しっかりした発酵をしてくれるということだ。
コーボ だから甘ったるくなく、彫りが深くてキレのある味わいになるんですね!僕は生酛貴醸酒さんの複雑な酸が、何とも素敵だと思います。
貴醸酒 ありがとう。君たち酵母のお陰だよ。もうひとつ驚いたのは、美味しさの頂点に達するのがいつなのか、なかなか見えなかったことだ。
コーボ つまり、何年たってもこの先にもっと美味しくなりそうに思えたってことですか?
貴醸酒 そう。最初の2001年産を発表したのは2007年だった。今はさらに熟成期間を延ばし、10年を超えている。底知れぬポテンシャルだよ。
コーボ エヘン、それが生酛造りならではの底力ですよね!
貴醸酒 そうだな。甘やかなお酒を活かすのはつくづく高貴な酸だと思う。それが調和の柱であり成長の原動力なんだ。
コーボ なるほど。ラベルのデザインについても教えてください。
貴醸酒 モチーフは大七伝統の蔦の葉だ。私の葉が一番大きく、たっぷりしているだろう。
コーボ グリーンがボトルの深緑色と調和してきれいですよね。合うお料理は何ですか?
貴醸酒 食後のデザート酒として、プルーチーズや、無花果などのドライフルーツ、チョコレートと一緒に頂くのが貴醸酒の定番だね。しかし私なら、フォアグラのソテーやフルーツソースで煮込んだジビエなど、メインディッシュに合わせてみるのも面白いと思う。
コーボ パリの最高級ホテル「ジョルジュ・サンク」のエリック・ブリファール総料理長さんがあなたに合わせたのは、洋梨ソースを使ったフォアグラ料理でした。想像するだけでヨダレが出ちゃう!
貴醸酒 ハハハ。あれは本当に見事だったよ。私のことは、冷やし過ぎない微冷温で飲んで欲しい。豊かな風味が広がるようにね。それから香りを楽しむなら、グラスも少し大きめがいい。
コーボ 了解です!ところで生酛貴醸酒さんは年間に何本くらい造られるんですか?
貴醸酒 300mlで数百本に過ぎない。発酵のコントロールが難しいので量産はできないんだ。
コーボ 本当に貴重な一本なんですね。生酛貴醸酒さんは量はとても少ないけれど、大七の世界観を実現するのに欠かせない、宝石のような存在です。これからも頑張ってください!