シリーズ:お酒が語る、酒物語

「純米生もと」

コーボ 「さあ、今回からいよいよ新シリーズの『お酒が語る、酒物語』のはじまりだ。これから訪ねるのは、大七で最大の売り上げを誇る純米生もと。名実共に大七の看板商品だもの、ちょっと緊張するな。ご、ごめんください…」
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純米生もと 「おや、コーボ君じゃないか。何だい、改まって?」
コーボ 「あのー、純米生もとさんのことを色々聞きたいのです」
純米生もと 「ああ、いいとも。僕の歴史は意外と古くてね、先々代当主の八代目が昭和30年代に着手していたんだ。ただ当時は級別制度が壁になって日の目を見なかった。漸く登場したのは、地酒に脚光が当たり始めた昭和58年だった。簡易な近代製法では味わえない骨太で滋味豊かな味わいが、たちまち日本酒愛好家の心をつかんだんだ。僕は流行を追う浮気なファンよりも、自分の価値観をしっかり持ったリピーターの皆さんのお陰でずっと成長しているよ」
コーボ 「本物の味がブレイクしたんですね」
純米生もと 「うん。正確にはブレイクは過去2回あった。最初は平成8年、フジテレビの『ワーズワースの冒険』で、俳優の伊武雅刀さん演じる中年紳士が絶賛した時でね。放映の翌日から電話が殺到した。そして二度目は平成17年。日経新聞『何でもランキング』で、おせち料理にあう日本酒の圧倒的第一位に選ばれた時だった。この時は初回を上回る大反響が長いこと続いたよ」
コーボ 「そうそう!あのときは本当にてんてこ舞いの大忙し」
純米生もと 「でもね、注文急増はありがたいけれど、品質の維持が最優先なんだ。お客様には少しお待ちいただいても、大切な熟成期間を短くして早出しするようなことはしなかった」
コーボ 「そうこなくっちゃ!さもないと折角のお客さんをがっかりさせてしまうもの」
純米生もと 「全くだよ。おかげで新しく僕の飲み手になってくれた皆さんも、しっかりリピーターになって下さったみたいだ」
コーボ 「それは僕も嬉しい」
純米生もと 「ありがとう。自慢させてもらえば、その他にも月刊誌ダンチュウでの第一位、利き酒師の皆さんが選ぶ地酒大SHOWでのプラチナ賞が数回…」
コーボ 「まさに第一位のオンパレード!そこまで人気を博した秘密は、自分ではどこにあると思います?」
純米生もと 「うーん。自分じゃ言いにくいけど、品質の軸が決してブレなかったのが信頼されたのかな。“冷でよし、燗ならなお良し”が僕の持ち味だ。味わい豊かな包容力と言ってもいいね。そうそう、鍋料理とかアワビのような深い旨味の料理との相性では誰にも負けないよ。淡麗な酒や若い酒では合わない世界があるんだ」
コーボ 「なるほど。だから和食だけでなく中華や洋食にもよく合うんですね。ところで純米生もとさんには仲間が沢山いますよね?」
純米生もと 「よくぞ聞いてくれたね。僕の兄弟は秋に出る『冷おろし』、お次の『寒おろし』も。初夏からの『純米生もと原酒』も忘れちゃいけない。バリエーションも大七で一番さ」
コーボ 「そういえば『生もと梅酒』も?」
純米生もと 「そのとおり。生もと梅酒さえ、元のお酒は僕なんだよ。そして僕の上にも、魅力的な兄貴分のお酒達がいるよ。後で是非訪ねてくれたまえ」
コーボ 「ハイ!これからも大七の大黒柱として頑張ってください」
純米生もと 「ありがとう、コーボ君。じゃあ、皆さんに宜しくね」