シリーズ:お酒が語る、酒物語

「本醸造生もと」

コーボ これから訪ねるのは、僕の一番昔からの親友だ。生もと君、こんにちは!
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生もと やあ、コーボ君。元気かい?
コーボ うん。今日は生もと君に色々話してもらいたいんだ
生もと いいとも。僕の名は正確には本醸造生もと。大七で単に生もとと言えば僕のことさ。僕は生もとシリーズの最古参。生まれたのは昭和57年だ
コーボ へえー。その前は大七ではどうしてたんだろう
生もと もちろん生もと造りは遥か昔からあった。蔵の隠し味としてね。それが当時の地酒ブームで初めて、単独商品として表舞台に立ったわけさ
コーボ ふーん。世の中に特、一、二級酒しか無かった時代に、衝撃的な登場だったろうね
生もと そう。初めて"味覚の感動"を味わった、という沢山の声を頂いた。その後、純米酒、純米吟醸と仲間が増えたけど、今でも僕でなければ、という愛飲家も多いんだよ
コーボ そうだよね。君のこと、失礼だけど単なる本醸造と思えないと言う人もいるよ。吟醸が容易く造られるようになった時代なのに、見事に君はロングセラーになっているね
生もと ハハハ。精米歩合とか数字に目が行くのも分かるが、本当に美味しさを決めるのは、数字に表れない工程をいかに手を掛けて行うかだよ。丁寧にムラ無く精米する、和釜でしっかり蒸して、名人が手造りでじっくり麹を造る。仕事の質が大切なんだ
コーボ なるほど。機会にプロセスを任せるのとは大違いだ。その上、複雑で高度な生もと造りの作業がある!
生もと 大七ではひと冬に百数十回の生もとの仕込みがある。よその蔵人が一生かかっても経験できない回数を、ひと冬でやるんだよ。長い年月のうちには、それはもう圧倒的な経験知の差になるのさ
コーボ すごいや!生もと君の自信の源が分かった気がするな。それと、原料にもこだわりがあったよね?
生もと うん。大七では添加するアルコールは米アルコールしか使わない。日本酒は米の酒であるべきだという考えだ
コーボ 僕、その頑固さが好きだな。基本は決してゆるがせにしないもの
生もと ああ。今では純米生もと君にその座を譲ったが、それまで僕が大七の大黒柱だった。基本のお酒がもつポテンシャルを見直してほしいね。夏には冷酒、冬にはお燗、そして秋には旬の味わいの冷やおろしと、楽しみ方が一杯あるよ
コーボ 了解!生もと君は、日本の生もと造りのスタンダードとして、海を越えて評価されてるね
生もと ありがたいことだな。米国では大七のヒットの原動力になれた。今じゃ米国人にもキモトの名前を覚えてもらったよ。尤も、ビッグ・セブンという愛称のほうが親しまれているけどね
コーボ それはいいや。ではミスター・ビッグ・セブン、あなたに合う料理は何ですか?
生もと そうだねえ、相性は幅広いが、しっかりした風味のもの、クリーミーな旨味をもつものがいいね。天婦羅やあなご、チキンのロースト、白身魚のムニエルとか
コーボ 最後の秋の旬、冷やおろしの楽しみ方を教えて
生もと 冷やおろしにはフレッシュさと熟成が絶妙に同居している。冷やは涼しい室温、お燗ならぬるめの燗が一番適しているよ。旬の肴と一緒にね
コーボ そりゃ美味そうだ!今日は沢山の話をありがとう
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