シリーズ:お酒が語る、酒物語

「楽天命」

コーボ これからお話を聞くのは、『楽天命』さん。大七の純米酒の最高峰だ。ちょっと興奮しちゃうな・・・
楽天命 やあ、いらっしゃい。コーボ君。変わりないかな
コーボ ハイ!元気です。楽天命さんは、日本酒業界で、半世紀ぶりに復活した木桶仕込みのお酒でしたね
楽天命 そう。復活を最初に提唱した米国人女性のセーラ・カミングスさんに感謝しなければならない。実は私は、始めはさほど乗り気ではなかった
コーボ えっ?それは意外です
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楽天命 古い文化は大切だが、木桶に話題作り以上の意味があるのか、確信がもてなかった。 考えが変わったのは、ある酒蔵を訪ねたのが切っ掛けだ。世界一高名なブルゴーニュのドメーヌだよ。そこには今も現役で活躍している素晴らしい木桶たちがいたのだ。やってみたいという気持ちに火が付いた瞬間だった
コーボ へぇー、ドラマチック!
楽天命 現代最高の醸造元が木桶を選ぶなら、木桶には選ばれるだけの理由があるのだ。それを大七の生もと造りで、是非、確かめてみたいと思った
コーボ やってみて、どうでした?
楽天命 うん。最良の木桶仕込みには独特の高貴さ、彫りの深さ、味わいの凝縮感がある。伸びやかで、しかも力強いんだ。何かに開眼した思いがしたよ
コーボ それって何でしょう?
楽天命 日本酒の発酵は、本来非常に複雑なものだ。現代の技術は不可知の部分を切り捨て、単純化することでそれに対処した。反面、名状しがたい味わい深さを失ったのだ。木桶仕込みには、生もとと同様に、それを復活させる力がある
コーボ そうか!だからこそ大七が手掛けなきゃならないんだ
楽天命 同感だ。歴史を紐解けば、日本で木製の木桶が作られたのは室町時代。それまでのかめより遥かに沢山の酒が出来、酒の市場が生まれた。市場でもまれることによって洗練を遂げ、土着の酒から世界の美酒となる第一歩を踏み出したのだと考えれば、また意義深いじゃないか。21世紀が始まる2001年、大七は木桶仕込みを復活させた。その結果は、先に話した通りだ。
コーボ 実際に発売されたのは2003年からでしたね?
楽天命 うむ。私の潜在力を開花させるのに、それだけの時間を要した訳だ。その後はさらに何年もかかるようになった
コーボ 楽天命さんは、蔵人たちが半年かけて木桶を手入れし、自分達で半年かけて有機栽培した五百万石で仕込みます。本当に造り手の思いがあなたにこもっていますね
楽天命 ありがたいことだね。私の名前の由来を知っているだろう?天命を楽しむ・・・。私達の天命を、大いに喜びをもって全うしようではないか
コーボ ハイ!!僕達も頑張ります!あるパーティーで楽天命さんが乾杯に使われた時、一斉に飲まれた直後に起きた静かなどよめきが忘れられません。大吟醸じゃなくても、お客様はこんなに感動するんです
楽天命 大吟醸ならざる高級酒というジャンルが存在しうるという、確かな手応えを感じるよ。この先にも道は続くのだ
コーボ そうですよね。最後に、楽天命さんの楽しみ方と、合うお料理を教えてください
楽天命 私は是非、ぬる燗での旨みを楽しんでほしい。料理も豊かな旨みの乗った食材に抜群に合う筈だ。洋食ならジビエもチーズも良いだろう
コーボ ありがとうございました!
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