シリーズ:日本酒飲み方指南

第8回「唎き酒、格好いい飲み方」

コーボ 生もと君!肝心の日本酒の飲み方を教えてよ!
生もと んん?今までずっとやってきたんじゃないのかい?飲む順番、器、食との相性・・・
コーボ そうじゃなくってさ、今度は飲み方そのものを知りたいんだよ。どうしたらもっと美味しく感じるか、どう飲んだらカッコイイか
生もと なるほど。どう飲めばより美味しいかは、お酒から沢山の美味しさを感じるってことだ。それなら唎き酒の仕方が参考になるだろう
コーボ 唎き酒?お酒を鑑定する時の飲み方だね。プロっぽくてカッコイイ!是非教えて!
生もと ハハハ、形から入るコーボ君らしいが、それもいい。先ずはお酒の色を見る。透明なワイングラスを使う時は、持つ手が映らないように足の下のほうを持つ。プロはさらに下の土台を持ったりする
コーボ いいね!僕もそうするよ!で、どんな色だといいの?
生もと 日本酒の場合、透明だったり淡い金色だったり、薄にごりだったり。それぞれの色調を楽しめばいいのさ。色に決まりはないよ
コーボ そうか。それで次は?
生もと 器を鼻に近づけて、じっくり香りを楽しむ。長所短所を表す沢山の唎き酒用語があるが、それを覚えるより、自然の中や身近にある色んな香りを意識して、あ、あれに似た香りだなと感じられたらいい
コーボ ふーん。日頃から香りに意識が向くようになるな。次は、いよいよ飲むんだね?
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生もと うん。一口、口に含んだらいきなり飲み込まず、じっくり味わいを感じよう。最初の印象から、後からじわじわ感じる味わいまで色んな香味が含まれている。じっくり味わうとこんなにも風味が詰まっていたのかと驚くよ。飲み込んだ後の余韻も意識しよう
コーボ 何だか楽しくなってきた
生もと まだ終わりじゃない。そのお酒の物語を聞いたり、自分の感想を語り合ったりしてみよう。目、鼻、口だけでなく心でも美味しさを楽しむんだ
コーボ 判ったよ!格好いいプロの鑑定家より、僕にはこっちが向いているな
生もと 味覚は体調や気分で随分変わるものさ。それに左右されない安定した味覚を身に付けるには長い熟練が必要だ。プロを目指すのでなければ、味覚は時に変わるものだという事実を受け入れたほうが面白い。今の自分に美味しく感じられるのはどんな酒かなと探せば、自分の新しいお気に入りを見つけられるかもね
コーボ 了解!自分に素直にね。でも僕、やっぱり『格好いい飲み方』にも未練があるな
生もと よしよし。見た目で言えば、首を突き出して前かがみで飲むよりも、背筋が伸びていたほうがいい。一気飲みもいただけないね。盃やぐい呑の持ち方は、まあ、慣れる程にぎこちなさが消えて自然体になっていくよ。焼き物作家の酒器は、大抵どこかにぴったり手に馴染む部分がある。愛(め)でる気持ちで大切に扱おう。それから塗り物は傷付きやすいから一層気を付けて大事に
コーボ なーるほど。自然体の良さと、モノや相手への配慮だね
生もと そのとおり。相手に不快な思いをさせない、相手のペースを尊重して無理に勧めない、そして自分が乱れないことだ
コーボ ふむふむ。カッコよさは形よりも生き方にあり、か
生もと そうさ。それに気前の良さもカッコよさだよ。今日は僕のおごりだから、存分に楽しんでくれたまえ!