シリーズ:日本酒飲み方指南

第7回「乾杯のうんちく、健康」

コーボ 生もと君、日本酒の飲み方をいっぱい学んで楽しかったよ。今日は二人で乾杯だ
生もと よし、乾杯! ところでコーボ君、日本で最初の乾杯はいつ頃だったか知ってるかい?
コーボ いつだろう? うんと昔?
生もと 確かに『乾杯』という言葉が最初に現れたのは平安時代だそうだ。でも杯を掲げたりグラスをカチンと合わせたりする西洋風の乾杯は、幕末にペリー提督が黒船でやってきた頃に伝わったらしい。『ペルリ提督日本遠征記』には、来航してから翌年、日米和親条約を締結するまでに、交渉に当たった幕府高官と5回の酒宴があったことが記されている。日本人はそこで初めて西洋の乾杯を見たんだろう。同じ頃、日英和親条約協定後の晩餐会で、英国代表のエルギン伯が日本側に乾杯することを提案し、井上清直が立ち上がって『乾杯! 』と叫んだのが最初だという説もある
コーボ ふーん。日本人にとっては珍しい習慣だったろうね。それがみんなに広まったの?
生もと 文明開化と共に少しずつ洋食が広まっていった。乾杯は特に、西洋式の訓練を受けた軍隊の凱旋祝賀会で普及していったそうだよ
コーボ 面白いな。それまでの日本には、乾杯に相当する習慣はなかったの?
生もと あったとも! 日本人にとって最も大切なお米から手間暇かけて造られる日本酒は、神様への最も貴重な捧げ物だ。そのお酒を頂くのに儀礼が発達しない訳がない。コーボ君も何か経験あるだろう?
コーボ エート、飲み会に遅れて来た時の『駆けつけ三杯』とか?
生もと ハハハ。それも立派な儀礼だよ。まず神様にお供えしたお酒を作法に則って三献頂くのが正式なんだ。結婚式の『三三九度』にその伝統が残っている。そういう正式な場が『礼講』。それを終えてから、儀式張らない宴会の『無礼講』が始まるんだよ。遅れて来た人は、まだ礼講を済ませてないから略式の駆けつけ三杯をすることになったという訳さ。おっと、でも無理強いはしちゃいけないよ
コーボ なーるほど! ちゃんと意味があったんだね。乾杯も礼講も、みんなの健康や長寿を祈って行ったんだろうな
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生もと うん。実際日本酒には健康や美容にいい成分も含まれてる。飲み過ぎず、楽しく適量を飲んで、健康に長生きしてほしいな
コーボ へぇー。健康や美容にいいって、どんなふうにいいの?
生もと 日本酒は、人の体にとって大切なアミノ酸が他の酒類に比べて遙かに多い。それが色々な健康効果を生むんだ。例えば日本酒を飲むと、血行が良くなって体がポカポカするだろう。これは日本酒に含まれるアデノシンという成分には血管を拡張し、血流をよくする働きがあるためだ。固まった心身をほぐしてくれ、肩こりや冷え性にもいい
コーボ 体も心もほっこりするね。それじゃ美容にいいのは何?
生もと 日本酒にあるコウジ酸は、肌のシミの元となるメラニンの生成を抑えるし、張りと艶のある肌を作る成分もある
コーボ いいね。日本酒ならどれも効果は同じなの?
生もと 成分によっては多少異なるものもあるよ。例えばペプチドは純米酒に特に多いが、血圧を下げたり記憶力改善につながる効果があるらしい
コーボ そりゃすごいや! 適量を守って、日本酒で人生を長く楽しみたいね!