シリーズ:日本酒飲み方指南

第6回「料理法 和、洋、中」

コーボ お肉に魚、野菜、果物と、素材ごとに日本酒との組合せを色々見てきたけど、料理法によっても変わるよね?
生もと いいところに気が付いたね、コーボ君。和、洋、中で調味料も違えば料理法も違う。そのうえ伝統的には、美味しさに対する考え方や相性の感じ方も違うんじゃないかなぁ
コーボ うんうん。そう言えば素材そのものの旬の味わいにこだわって、包丁さばきとお出汁の美味しさで勝負するイメージの日本料理と、色んな素材や技法を駆使して何時間もことこと煮込んだり焼いたりするイメージの西洋料理と、もともとは随分違うね
生もと 実は食べ方も違うよ。和食ではおかずを食べながらご飯を食べるだろう。口の中で両方が混じり合って美味しい味わいになる。これを口内調味と言うそうだ。お酒を飲む時も、口に残った料理とお酒が口の中で融合してどんなハーモニーを生み出すのかが肝心だ。それに対して西洋では、一皿ずつ平らげていくし、ワインも料理を飲み込んでからおもむろに飲む。だから相性は料理の風味の余韻とワインの香りが中心だと思う
コーボ ねえ、生もと君。和食の世界では料理を『邪魔しない』酒がいいとよく言うだろ? 邪魔しないのがいいなんて、僕は淋しいな。フランス料理が言う『マリアージュ』は二つのものが出会ってさらに素晴らしい第三の味わいが生まれる、とても素敵なイメージだね
生もと そうだねえ。確かに日本の言い方は控えめだけど、日本酒は持っている旨みで料理の味わいを持続しふくらませる素晴らしい働きをする。だから料理と同質の旨みのものがいいし、素晴らしいマリアージュも生み出すよ。ワインは油脂の多い西洋料理から舌を洗い、残った香り同士の相性を楽しむ。日本酒のように料理そのものと一体になるのとはちょっと違うね
コーボ 面白いな!でも和食も西洋料理も、お互いに影響し合って段々似てきたんじゃない?
生もと その通り!和食は西洋の素材や調理法も使うようになって味わいの幅が拡がった。西洋料理は和食の影響で油脂を減らし、素材重視のライトな味わいになった。従来の重厚なワインでは合わない場面も増えて、むしろ日本酒が良く合うようになってきた
コーボ エッヘン!和食にも淡麗辛口よりも旨みのしっかりした日本酒の相性が良くなったし、西洋料理にも洗練された力強い日本酒が求められている。つまり生もと造りの大七は、引っ張りだこさ
生もと ありがたいよ。最近は中国料理の世界でも、日本酒の出番が増えてきた。中国料理のフルコースにどう対応するかが、僕の目下の研究テーマだ
コーボ 中国料理って、濃厚な旨みのものが多いから、旨みのある大七と相性良さそうだね
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生もと うん。醤油ベースの濃厚な味わいのものには、熟成した力強い日本酒。楽天命や純米生もとクラシックがぴったりだ
コーボ 僕、中華では点心が大好きだよ。点心には何がいい?
生もと 先ずは純米生酛のお燗!洗練された点心には皆伝もいい。そうそう、中国料理に意外と合うのが貴醸酒だ。見た目が黒っぽいソースには大体合うね。美味しさをふくらませる
コーボ へえー!他にも意外な相性のお酒はある?
生もと 生もと梅酒シルキースパークリング。爽やかな甘酸っぱさがなかなかいけるんだ