シリーズ:郷土の宝物語

第5回「木幡の幡祭り」「針道の暴れ山車」「小浜の紋付祭り」

コーボ わが二本松市には、旧市内の提灯祭り以外にも、各地に伝統的なお祭りがあるんだね
生もと うん。今回は3つ紹介しよう。一つ目は『木幡(こはた)の幡(はた)祭り』。これは11世紀の前九年の役で、陸奥国領袖(むつこくりょうしゅう)の安倍氏と征夷大将軍源頼義が戦った故事にに由来すると言い伝えられている。戦に敗れた源氏の軍勢は、わずか数騎で木幡山に立て籠もったそうだ。その夜、降り始めた雪で、一夜にして全山が白くなった。すると源氏を追走してきた安倍の軍勢は、これを源氏の白旗に見間違え、官軍が多数いると思い込んで、戦わずして敗走してしまったそうだ。これが『幡祭り』の由来だ。現代では、白幡を先達に色とりどりの幡が行列し『日本三大旗祭り』の一つとも言われているよ
コーボ ふーん。元々は白い旗の故事だったのか。今はとってもカラフルだね。行列のほかに、『羽山籠もり』や『胎内くぐり』という儀式もあるね
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生もと それらは15歳以上の男子の成人儀礼の意味があるらしい。古代から伝わる儀礼を色濃く残しているから、国の重要無形民俗文化財にも指定されているんだよ。冬の風物詩だ
コーボ これは木幡山にある隠津島(おきつしま)神社のお祭りだ。境内にある三重塔や、国の天然記念物の『木幡の大杉』も見物だね
生もと 二つ目は、四百年の伝統を誇る『針道(はりみち)の暴れ山車(だし)』。昔、この付近一帯が凶作続きや疫病の流行にあった時に、人形を飾った山車や神楽囃子(かぐらはやし)を奉納したのが由来だそうだ。今では毎年10月に開催される。山車も、地元の若連が作った大型人形を飾りつけた山車になった。豪快な太鼓の音が鳴り響く中で、地区ごとに用意された7台の山車が、次々に激しくぶつかり合うんだ
コーボ 近くで見ると、すごい迫力だよ!そして人形は勇壮な侍だったりアニメのキャラクターだったり。基本は自由だそうだ。各若連のアイデアの見せどころだね
生もと 暴れ山車の後には、ご神体を神社に戻す行事もある。暴れ山車とは対照的に厳かな雰囲気になるよ。 さて最後は『小浜の紋付祭り』。二本松提灯祭りの後の三日間、行われる。4台の金箔の太鼓台が町内を練り歩くんだ。江戸時代、ここが丹羽侯の支配下にあったとき、天明の飢饉からの村の復興のため、村民がお金を献上して御神輿渡御(おみこしとぎょ)の許可を受けたそうだ。その御神輿にお供えする形で、太鼓台がついて回るようになったと伝えられている。それがもう、二百年以上も変わることなく続いているんだ
コーボ 太鼓台を先頭に、紋付袴姿の若連がお囃子を奏でながら町内を練り歩くから、紋付祭りというんだね。過去に町内を出たことは一度もなくて、門外不出の祭りと言われていたそうだ
生もと うん! それが遂に町を出たのが、昨年の二本松市制10周年記念『二本松! お祭り三昧! 大集合!』だ。二本松提灯祭りを含めた二本松の四大祭りが、史上初めて二本松城下に勢揃いしたんだよね
コーボ 何もかも異例ずくめで、あれはもう大興奮だった! もういっぺん見てみたいな!
生もと そうだね。またいつか、きっと行われるだろう
コーボ 二本松のそれぞれの地域で、みんな真剣にお祭りを守っていることに感動しちゃったよ
生もと 本当だ。お祭りを維持していくエネルギーは大変なことだ。皆の郷土愛の賜だね